月別アーカイブ: 2014年6月

ALAPHO be Ambitious

約一年前に立ち上がったALAPHOも、無事に演奏会を終えました。
そして演奏会にまつわる会計処理等の事後処理も無事に終え、ご尽力いただいた方々からのメッセージを皆様にお届けし、ようやく私にとっての終演を迎えることができました。
本ブログをもって、HPの更新を終了しようと思います。

わくわくドキドキする一年でした。
なによりも私自身がわくわくドキドキしたいと思っていたし、それが少しでも多くの人に伝染すればいいと思って活動していました。
いくつになってもわくわくドキドキしていたいです。少年のように。少女のように。

ALAPHOならではの音楽が奏でられたことにとても満足しています。
でも、きっともっとわくわくドキドキすることがこれからもみつかると思います。

これからの出会いを楽しみに、ひとまずいったんここで終わります。

ありがとうございました。

ALAPHO代表 Yuko Yoshinobu

ALAPHO中継動画 > こちら

運営メンバーからひとこと(その2)

ども、広報担当のさこです。

ちょっと間が空きましたが運営メンバーからのひとこと、その2です。

■Vn世話役
Vn世話役のゆっこです。
アラフォー1年生、しかも普段クラシックオケとはあまり縁のない
若輩物ですが、主催者ののぶさん、指揮者のこーのさんとのご縁
から、世話役&2ndVnトップを拝命いたしました。

Vnパートはオーケストラの中で一番人数が多いので、皆さんの顔
を覚えたり席順を決めたりするが難しいパートなのですが、
アラフォーの先輩方のあたたかいご協力のもと、いろんなことが
すんなりと決まり、演奏に集中させていただくことができました!

演奏会にご来場くださった方、動画で演奏をご覧になった方は
アラフォーの底力を実感していただけたのではないでしょうか。
またこんな素敵な演奏会があったらぜひ参加したいと思います。

ありがとうございました。

■Va世話役
今回世話役としての拝命をいただきながら、諸々の事情によりプレイヤーとして参加することができなかったことを残念に思うとともに、パートの方やのぶさんには大変申し訳なく思っています。(ブログに書かれていた「1名」とは私のことです。)

しかしながら、名キャラ揃いのアラフォーなヴィオラパートですから、きっと一致団結して演奏会に臨んで下さり、そして演奏会を通して何かしらの気付きやきっかけをもたらしてくれたものと、今でも信じています。

最後に、

「アラフォー万歳!」

のぶさん、ヴィオラパートの皆さん、この企画に関わった全ての皆さん、ありがとうございました。

■Cb世話役
のぶさんからご指名を受けてコントラバスの世話役を務めさせていただきました。

同世代でオーケストラなんて面白そうなコンセプトだなぁ、と参加させていただいたものの、常に人手不足のコントラバス、今回も予想通り(?)なかなか人が集まらずやきもきしていたものの、最終的には5人中4人が5弦ベース、という変態ばっそ軍団になっておりました。

平日の練習は楽器持参が難しいコントラバス、毎回レンタル楽器を準備いただけたことは非常にありがたかったです。
お陰様で本番では、強力な屋台骨を提供できたのでは、と思っております。

このコンサートに関わったすべての皆様、ありがとうございました。また何かやりましょう!

■金管世話役
今回世話役としての参加でしたが、仕事やプライベートでバタバタとしてしまい、あまり積極的に運営仕事に関与できなかったため申し訳なく思っております。

金管楽器は、元々それぞれの楽器で吹き手のキャラクターが違っていて
ホルン:4人でひとつ!
トランペット:完全に一匹狼
トロンボーン・チューバ:横並びの4人だけなら平和
どこの団体でもこういった感じなのですが、若いころと比べるとアラフォーはその辺りが顕著になっていたと感じましたwww
このように己の信念を貫く、これが出来るようになってきたのも40歳を迎えると言えると思います。
紆余曲折がありましたが、なんとかパートが欠けること無く本番を通すことが出来、ほっとしています。
また機会がありましたらよろしくお願いします。

■ステージマネージャー
アラフォーたちが大人の本気を魅せてから、早くも1ヶ月以上が経ちました。運営スタッフの皆様方がコメントを寄せているので、遅くなりましたが裏方スタッフの一人としてコメントさせて頂きます。
ステージマネージャーを務めましたタツキと申します。
主宰の Yuko さんから声をかけられたのは、本番の1年以上前。ホールを決める前から「来年5月10日は空けておいてね〜」と。聞けば自分の誕生日で、アラフォーを集めて演奏会を行いたいという。面白い企画と思い、二つ返事でOKと回答。返事をしてから良く考えてみると、「俺、アラフォーじゃね〜し(笑)」と思ったが「スタッフはOK!」との言葉に一安心した事も、今となっては楽しい思い出です。
さて、ステージマネージャーの仕事といえば演奏会を円滑に進行し、演奏者にもお客様にも喜んで頂けるステージにするため裏から支えております。自分はステージに立つ事もなく演奏はいたしませんが、気持ちは演奏している仲間と一緒に演奏会を作りあげてると思っています。
この演奏会に参加した皆様、会場にお越し下さった皆様、中継をご覧頂いた皆様、中継・録音や受付、お弁当や打ち上げでお世話になった方々、この楽しい演奏会にお世話になった全ての方々に感謝するとともに、改めて Yukoさんにおめでとうを伝えたいと思います。
皆様ありがとうございました。

■指揮者
指揮を務めました河野でございます。
はい、みなさんのこーのさんです。

お祭りが終わってしまっては、心地よい余韻とみなさんへの感謝の気持ちしかないんですが、
「アラフォーにこだわる」ということで色々考えてこじつけて、
こじつけと音楽・舞台表現との折り合いをつけていく作業は、それ自体が楽しいものでした。

最後にだれも気づいてない仕込みネタをばらしますと、
エニグマFinaleがフィニッシュした時、私の左手は4、右手は0を表現していました。
4ヽ(=´▽`=)ノ0
Glayの真似ではありません(←そんなことしてるからカーテンコールでドタバタするんじゃ!)

というわけで、本当にみなさまありがとうございました。
またどこかでお会いしますかねぇ。

中継チームの仕事(後編)

【4】 当日の運用

さて、事前の機材検討にちょっと時間をかけ過ぎてしまいましたので、駆け足で当日の運用を振り返ります(汗)。

現場にトラブルは付き物とよく言いますが、大小問わずトラブルの無い現場は自分の経験上でも皆無です。どんなに準備に時間をかけても自分のコントロールの及ばないところに潜在的な問題が潜んでいたりします。

まず、本番当日最初にぶち当たった問題の一つがインターネット接続性の問題でした。要は、必要なアップロード・スピードが出てくれないのです。事前の現場調査時の測定では 4 Mbps 程度コンスタントに出ていたものが、当日は予想以上に不安定な状況でした。

そのため、非常に残念ながらプレコンサートの中継が実現出来ず、その間ずっと、安定的に配信出来るエンコーディングの設定を探っていました。この間の精神的なプレッシャーというのは生中継を経験されたことがある方ならお分かりでしょうが、非常に厳しいものです(笑)。

今回、インターネット接続にはとあるキャリアの LTE 回線を使用しましたが、基地局からの電波の受信状況自体には全く問題がありませんでした。考えられる原因としては、来場されたお客様との “帯域の取り合い” になってしまっていた可能性はあります。商用配信の場合、事前に NTT 等のキャリアの光ファイバーを会場に引き込み、より確実なインターネットとの接続性確保を目指すところではありますが、今回は会場側の都合もあり、それは叶いませんでした。

この場合、私に出来ることは、音質・画質をなるべく落とさずにいかに配信ビットレートを落とせるか、ということになります。この辺りも知識、勘、経験が最大限に活きてきます。

結果的に、映像と音声の配信品質を多少犠牲にせざるを得なくなりましたが、メインのプログラムの開始前になんとか安定的に配信出来る状態に持って行くことが出来ました。

Kaoru_Cam_2_2014-05-10 10.30.14

華麗にカメラを操るカヲルさん

華麗にカメラを操るカヲルさん

次の問題はやはり初めて実戦に投入するワイヤレス映像伝送の部分でした。実際にカメラをステージ上に設置してみると、やはり問題が発生しました。

実は、リハーサル中にカメラを設置した際には映像は中継ベースまで飛んで来ていたのです。しかし、いざ本番となると 2 台とも映像が飛んで来ない!もうどうしようもないので、残りの 2 台のカメラで乗り切るしかありませんでした。

一曲目のブラームスが終わり、インターミッションに入ったところでカヲルさんにステージ上のカメラを見て来てもらいました。時間に制約がある中きちんとトラブルシューティング出来ていないものの、ふと気付くと一つのヒントが得られました。1 台のカメラの映像伝送を止めている時にはもう 1 台の映像は特に途切れることなく伝送されて来ているじゃないか、と。そこで、後半は指揮者監視カメラだけ残してもう 1 台の使用を止めることにしました。

その対処は一応、適正だったようです。後半は概ね問題無く最後まで指揮者の豊かな表情を捉えることに成功しました。

視聴者の皆様のリアルタイムな反応を見ると、こうして苦労がありながらも指揮者カメラを用意して正解であったと確信しました。今後も “求められた画” をお届けするために様々な技術的チャレンジをして行くぞと心に誓った瞬間でした。

 ◇  ◇  ◇

という訳で、中継の裏側ではこのようにあらゆる事柄を検討し、種々の問題を解決してようやく皆様にお届け出来るところまで漕ぎ着けています。

これを後押ししているのは、中継を期待してくださっている視聴者の皆様の存在もさることながら、ここに集まった演奏家の熱い思いを余すところなく発信したい!という我々中継チーム自身の強い思いに他なりません。中継チームも演奏家に負けず劣らず燃えているのです。

今回の演奏会中継において少しでもその思いが形となって皆様のもとにお届け出来ていたならば、これ以上嬉しいことはありません。

ALAPHO 中継チーム 代表

中継チームの仕事(中編)

【3】 機材選定

さて、ここまで検討した内容を基にいよいよ具体的な機材の選定に入ります。

● 音声系

<マイクロフォン>

演奏会の主役である “音楽” を捉える上で最も重要なのが音声系機材、特にマイクロフォンです。今回はオーストリア AKG の C414 を選択しました。第一の選択理由は、数多あるマイクロフォンの中でも私が特に気に入っているモデルだからです。今回の演奏会でもその実力が遺憾無く発揮されると読んで決定しました。このマクロフォンを 2 本使ってワンポイント・ステレオでの収音です。マルチ・マイクではなく、敢えてワンポイント・ステレオで収音です。

<マイクロフォン・プリアンプ>

マイクロフォンの出力レベルは極めて低いため、それをライン・レベルまで増幅する必要があります。それを担うのがマイクロフォン・プリアンプ。いくらマイクロフォンの音質が良くてもプリアンプがイマイチだと全てが台無しになるため、こちらも機材選定には知識と勘と経験が活きます。

今回は RNP8380 というプリアンプを、録音を担当して頂く事になったゴトウさんが持ち込んでくださいました。C414 とのマッチングもなかなか良く、とても好印象でした。

鋭意準備中のゴトウさん(手前)とナカムラ

鋭意準備中のゴトウさん(手前)とナカムラ

<レコーダー>

ライブといっても必ず収録もします。

私は演奏会は必ず DSD フォーマットで録音を行っています。今回もコルグ MR-1000 を用いて DSD (サンプリング周波数: 5.6MHz) で録音しました。

MR-1000

MR-1000

DSD に拘る理由は、やはりその音質にあります。

私は 2006 年にコルグ MR-1 というレコーダーが発売されて以来ずっと DSD に触れて来ましたが、DSD の音質は一言で言うなら極めてナチュラル。

DA-3000

DA-3000

解像感では PCM に分があると感じる場合もあるものの、DSD のシルクのようななめらかさ、空気の密度まで感じさせるような表現力を体験すると、もう DSD を避けて通れなくなります。特にアコースティックな楽器は是が非でも DSD で録るべきでしょう。

PCM-D100

PCM-D100

 

また、今回録音担当の先述のゴトウさんが最新のタスカム DA-3000 とソニー PCM-D100 も持ち込んでくださり、贅沢にも 3 台の機材で DSD 収録という体制をとることが出来ました。DSD 万歳!

 

 

● 映像系

さて、ここから映像系の検討です。中継と聞くと真っ先に映像の事を思い浮かべる人が多いのですが、前述の通り、演奏会は “音楽” が主役であり、音声の品質が命です。

映像はあくまでも脇役で、検討の優先順位も音声の次になります。

<カメラ>

音声が優先とはいえ、決して映像を疎かにしている訳ではありません。

今回、カメラは中小合わせて 4 台投入しました。そのうちメインのカメラに業務用カムコーダー、ソニー HVR-Z7J を使用しています。

HVR-Z7J

HVR-Z7J

ちなみに、カメラを選定するに当たっては、まずどんなショットで構成するかを検討しました。

一般的に、オーケストラ全体が入る “引き” の固定の画は必須。そして、楽曲の進行に合わせて各奏者をハイライトさせる “寄り” の画も必須です。

さらに今回は指揮者がとてもエロいため、指揮者を監視するカメラを外す事は許されません。

そしてさらにもう一台ステージ上にカメラを置いて、何かアクセントとなる画が捉えられれば尚良いだろうと考え、合計 4 台のカメラを投入するに至った訳です。

メインのカメラは前述のソニー HVR-Z7J。これをカメラマンに振ってもらって “寄り” の画を作ってもらいます。

業務用カメラを使用する理由は単に画質が優れているからというだけではありません。フォーカスやズームやアイリスが “完全に” マニュアル操作出来るからです。しかもレンズが剥き出しになっていて各操作リングにすぐ指が届きます。映像表現のために業務用カメラが必要な理由の殆どはそこにあります。

“引き” の固定画には民生用のソニー HDR-CX720V を使用しました。民生用ですが、画質も満足のいくもので、さらにフォーカスもアイリスもマニュアル操作が可能です。もちろん操作性では業務用機に圧倒的に劣りますが、今回の用途は固定カメラですから、これで十分です。

HDR-AS30V

HDR-AS30V

ステージ上の 2 台の固定カメラには昨今小型カメラ市場を賑わせている “アクション・カメラ” を使用しました。ソニー HDR-AS30 と HDR-AS100 です。

この種のカメラのブームの火付け役は今や飛ぶ鳥を落とす勢いの米 GoPro の HERO シリーズで、当然ながら私も保有 (HERO3 Silver & Black) していますが、今回のようにライブ・カメラとして長時間安定動作してもらわないと困る用途では残念ながら GoPro には任せておけないのが実状です。

実は今回、私がこのプロジェクトで最も準備に力を注いだのはこのステージ上の 2 台のカメラでした。

HDR-AS100V

HDR-AS100V

ステージは、中継ベースである映写室から直線距離にして 30~40 メートル離れています。しかも映写室はホールの階上にあり、真面目にケーブルを敷いていたら最短でも 100 メートルからのケーブルが必要になっていたでしょう。カメラが HDR-AS30/AS100 ですから HDMI で接続する事になる訳ですが、HDMI でその距離を延ばすのは無理がありますし、そもそもケーブリングにそこまで労力をかけられません(最悪一人で何でもこなさねばならなくなる可能性もあった訳ですから)。

こうした理由でこれまでステージ上にカメラを置く事は避けて来た訳ですが、今回は前述の通り指揮者の監視が必須であり、どうにかしてこれを実現する必要がありました。

そこで、これまでずっと使ってみたくて機会を探っていたワイヤレス伝送を初めて投入する事に決めました。

ワイヤレス映像伝送方式にも色々ありますが、私が使用したのは AMIMON が開発した WHDI です。この方式では 5GHz 帯を用いて非圧縮の 1080/60p までの映像伝送が可能です。しかも遅延も殆どありません。

一見、無双に思えますが、一つだけ大きな不安を抱えていました。それは本当に電波が届くのだろうかという問題です。

今回使用した伝送装置は仕様書上で見通し 30 メートルの伝送が可能と謳っていました。先述の通り、映写室との直線距離は目測で 30~40 メートル。微妙です(笑)。

これは当日、実際にホールに設置してみるまで判らない訳で、不安を抱えたまま本番の日を迎えたのでした。

この結果については後ほど。

<三脚>

カメラの次は三脚です。

ここで三脚を紹介する理由が理解出来ない方は多いと思います。しかし、映像を表現の手段とする場合は三脚がカメラの次に重要なのです。

今回投入した 4 台のカメラのうち 3 台は固定でしたので、それらの三脚はそれほど神経質にならなくても問題はありません。しかし、メインのカメラは別です。

プロは特別なシチュエーション (ニュース取材やバラエティ番組のロケ、映画・ドラマ撮影時の特殊な効果を狙う場合など) を除いて必ず三脚を使用します。それだけ映像表現には三脚が欠かせません。

三脚は、厳密に言うと大きく二つのパーツから成っています。カメラを固定したり上下左右に振ったり出来るようにする「ヘッド(雲台)」と、所謂脚となる「三脚」の二つです。

特にヘッドは極めて重要で、映像表現としてパンやティルトを行うとき、如何に一定の速さで引っかかり無くスムーズにカメラを動かせるかが大切ですが、上手く出来ないとどんなに高画質なカメラで撮っても全くもって見ていられない酷い映像に成り下がります。

スムーズな動きだけでなく、制動も大切です。

優秀なヘッドはパンやティルトを止めるとき、手を離せばピタッとヘッドが止まります。止まるのは当たり前だろう、と思われるかもしれませんが、“安物” のヘッドでは一度止まってからカックンとわずかな揺り戻しが発生します。それぐらい大したことないように思われるかもしれませんが、映像表現としては大きなマイナス要素です。

これらの条件を検討すると必然的に三脚も業務用を選択することになります。優秀な業務用の三脚メーカーはそれ程多くなく、英 Vinten (ヴィンテン) と独 Sahctler (ザハトラー) がツー・トップと言って差し支えないでしょう。

Vision 11

Vision 11

今回は Vinten の Vision 11 という放送業務用ヘッドと、写真用三脚で世界最高峰といわれる仏 Gitzo のシステマティックカーボン三脚を使用しました。ご参考までにその価格は、Vision 11 が約 60 万円、カーボン三脚が約 12 万円、計 72 万円です。三脚も映像表現の重要なパーツということがお分かり頂けますでしょうか。優秀な三脚メーカーがヨーロッパに集中しているのもまた面白いですね。

今回の HVR-Z7J に対しては少々大きめのヘッドですが、大きな問題はありませんでした。Vision 11 は通常は写真のように大型のカムコーダーなどを載せて使用します。

HDW-700A と Vision 11

HDW-700A と Vision 11

<スイッチャー>

カメラの出力はすべてスイッチャーに入力されます。スイッチャーは入力された複数の映像ソースの中から一系統を選んでプログラム・アウトとして出力させるだけでなく、ソースの切り替え時のトランジション効果を作ったり、画像やタイトルなどを重ねて表示させるなどの機能をもっています。ライブ・プロダクションにはスイッチャーは欠かせない存在です。

画面右上に表示させる ALAPHO ロゴもスイッチャーの機能を利用してスーパーインポーズさせることにしました。

今回使用したスイッチャーは 4 系統までの HDMI 入力が可能で小型・軽量、ネットワーク経由で PC からでも制御可能な業務用スイッチャー、豪 Blackmagic Design の ATEM Television Studio です。業務用レベルの品質をきわめてリーズナブルな価格で提供している優れた製品です。

● 配信系

<音声・映像キャプチャー装置>

いよいよ最終段、配信系です。

音声・映像機器からの最終出力を PC に取り込むのがキャプチャー装置です。

配信 & スイッチャー制御用 PC とスイッチャー・モニター

配信 & スイッチャー制御用 PC とスイッチャー・モニター

当初、単体のインターネット配信機 Cerevo LiveShell Pro を導入しようと思っていたのですが、品薄状態が長く続いていて入手性が低かったため方針変更、新たに PC を調達してその PC でキャプチャーして配信することにしました。

キャプチャー装置には HDMI で入力し、USB で PC に入力します。こうした製品の多くは PC 側でソフトウェアでエンコードしてインターネット側に送信する設計になっているのですが、今回採用した製品にはハードウェア・エンコーダーが搭載されており、PC がそこそこ高スペックだったこともあって、CPU 占有率を僅か数パーセント程度で抑えて配信することが出来ました。

● 連絡系

<インターコム>

当日のスタッフ募集に奇特にも中継チームへの手伝いを申し出てくれた勇者が現れました。カヲルさんです。カヲルさんはプロダクションで現場でバリバリに放送業務用カメラを振っているプロです。この瞬間、メインのカメラをお任せする人 (今回の中継の肝パート) が決定しました。

プロのライブ・プロダクションの現場では、ディレクターが各カメラマンやスタッフに指示を伝達したり情報交換するのにインターコム (intercom; 略してインカムと呼ばれる) を使用します。

今回カヲルさんが登場してくれたことで、スイッチャー操作を担当する私がディレクター役となってカヲルさんに指示を出す必要があるため、インカムも用意する必要が生じました。

ECM-AW4

ECM-AW4

しかし、プロの現場で使用されるインカムは用意出来ないので、代用となるものとして見つけて来た Bluetooth のワイヤレス・マイクロフォン、ソニー ECM-AW4 を使用しました。これは本来、インカム用途を想定したものではなく、完全なる民生用の製品ですが、実際に使ってみると私がやりたかったことが完璧に実現出来、大変に役立ちました。今回使用したアイテムの中で最大のヒットと言って良いでしょう。

カヲルさんにステージ上のカメラを直しに行ってもらった際にも、30〜40 メートル離れたステージ上と中継ベース間でクリアな音声で会話が出来ました。

───後編に続く。

中継チームの仕事(前編)

こんにちは。アラフォー演奏会のインターネット中継を担当しましたナカムラと申します。

インターネットで演奏会中継をご視聴頂いた皆様、どうも有難うございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

今回、この中継を楽しみにしてくださった皆様の期待に応えるべく、我が中継チームは掛け値無く持てる力を存分に持ち寄って中継に臨みました。

その中継自体が我々中継チームの成果物であり、「視聴者の皆様に楽しんで頂く」というところまでが本来のミッションでしたが、ここにその活動を振り返る場を与えて頂きました。せっかくですので自らの活動メモとして書き留めておこうと思います。

中継と一言で言っても、実に様々な要素から成り立っていますので、一つ一つ順を追って見て行きましょう。

【1】 現場調査

どんなプロジェクトもまずは現場調査から。

今回ホールの現地調査に行ったのはまだ 2 月初旬、確か記録的大雪の翌日の寒い日でした。そう、本番 3 ヶ月前からアラフォー中継プロジェクト・チーム (といっても当時はまだ一人体制でしたが…) は動いていたのです。

そこではホールの大きさ確認、中継ベースの場所決定および広さやパッチ・パネル、電源アウトレット位置確認、インターネット接続性確認、カメラ位置・台数検討…というような事柄を行います。

実際に現場を見ることで、必要なケーブルの種類や長さなどを把握し、当日の装備を整えるのです。

今回は諸々検討して中継ベースを映写室に決定しました。

【2】 中継品質の設定

次に、現場調査で得た情報を基に、どのような品質で中継するかを決定します。

今はスマートフォンが一台有ればすぐに生中継が始められる時代です。とりたてて知識など無くても直感的に操作するだけであっという間に世界を相手に発信出来てしまう訳ですが、やはりお手軽なだけあって、品質面では圧倒的に劣ります。

オーケストラの演奏会の中継においては、この品質の低さは命取りになります。特に、主役である “音楽” を伝えるための音声の品質が低いだけで、大半の視聴者の皆様の関心は一気に削がれる事になります。

今回は(も)、業務用の映像・音声機材を中心に使用し、音声だけでなく映像も出来うる限りの高品質でお届けする事をゴールに設定しました。

───中編に続く。